道後公園と聞いて、何を思い浮かべるだろう。
桜。
湯築城跡。
展望台。
散歩をする人たち。
少なくとも、ゾウやキリン、ライオンを思い浮かべる人は、それほど多くないかもしれない。
しかし、かつてここには本当に動物園があった。
その名も、
愛媛県立道後動物園。
現在の「愛媛県立とべ動物園」の前身にあたる動物園である。
年配の方なら「子どもの頃に行った」と覚えているかもしれない。
一方で、閉園からすでに長い年月が経っている。
今の道後公園を知っている世代にとっては、
「ここに動物園があった」
と言われても、なかなか景色を想像できない。
そこで今回、図書館などで当時の資料を調べながら、
道後動物園があった頃の園内を再構成してみることにした。
道後公園の中に、本当に動物園があった
道後動物園が開園したのは、1953年(昭和28年)10月。
愛媛県の資料によると、道後公園内に「県立道後動物園」として新設された。
場所はもちろん、現在の道後公園。
今では湯築城跡として整備され、緑の多い公園になっている場所に、獣舎や動物の展示場が並んでいたのである。
そして道後動物園は、1987年(昭和62年)10月21日に閉園した。
つまり、約34年間にわたって道後に動物園があったことになる。
今の道後公園からは、なかなか想像できない
実際に現在の道後公園を歩いてみても、
「ここにゾウがいた」
「ここにライオンがいた」
と言われて、すぐに当時の姿を想像するのは難しい。
それもそのはず。
旧動物園区域はその後、湯築城跡として復元整備され、2002年(平成14年)にリニューアルオープンしている。
現在の景色は、動物園があった頃とは大きく変わっている。
ならば。
昔の資料を見ながら、動物園だった頃の姿を地図の上に戻してみたらどうなるのか。
今回やってみたのが、それである。
旧・道後動物園の園内を再構成してみた
当時の園内資料などを参考にしながら、
- 園内の地形
- 水路
- 獣舎や屋外展示場
- 動物の配置
- 管理事務所
- 子供用プール
- 乗物切符売場
- 演芸場
などを確認し、現在の地形とも照らし合わせながら園内図を作ってみた。
完成したものがこちら。
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※当時の資料や地形情報などをもとに、園内の配置を独自に再構成したイメージ図です。実際の縮尺や細部とは異なる場合があります。
こうして一枚の地図にしてみると、
想像していた以上に「ちゃんと動物園」だったことが分かる。
ゾウ、キリン、ライオン、トラ……かなり豪華だった
園内図を作りながら驚いたのが、飼育されていた動物の多さだった。
中心部にはゾウ。
その周辺には、
キリン、シマウマ、ライオン、トラ、クマ、カンガルー、ラクダ、シカ、イノシシ。
さらにサル類、ペンギン、フラミンゴ、ペリカン、ワニ、クジャクなども確認できる。
今の道後公園の景色を思い浮かべながら見ると、なかなか不思議な光景だ。
今なら静かに木々が並んでいる場所の向こうから、
ゾウが見えていた。
公園を歩いていると、
ライオンやトラの獣舎があった。
そして入口には、動物たちが並んだ大きなアーチ。
現在の道後公園からは、ほとんど想像できない世界である。

なぜ道後から動物園がなくなったのか
道後動物園は長く県民に親しまれた一方、時間が経つにつれて問題も出てきた。
とべ動物園の公式資料によると、周辺の市街化が進んだことで騒音や悪臭への苦情があり、さらに敷地が狭く、施設の整備や拡張が難しいという課題もあったという。
そこで、より広い土地を確保できる砥部町への移転が計画された。
1987年10月21日に道後動物園が閉園。
そのわずか1週間後の10月28日から、動物たちの本格的な引っ越しが始まった。
そして翌1988年(昭和63年)4月1日。
現在の愛媛県立とべ動物園が開園した。
つまり、
とべ動物園の歴史をさかのぼっていくと、道後公園にたどり着く。
ゾウたちも、道後から砥部へ引っ越した
この移転は、単に新しい動物園を造ったという話ではない。
道後にいた動物たちそのものが、砥部へ移動している。
とべ動物園によると、1987年10月28日の移送では、ゾウのタロウとハナコを積んだトレーラーを先頭に大型動物たちが道後から砥部へ向かった。
道後から砥部までは約12km。
車列は長さ約700mにもなり、時速10kmほどで一般道を進んだという。
今なら、なかなか想像できない光景だ。
道後から砥部へ向かう道路を、
ゾウを乗せたトレーラーがゆっくり走っていた。
道後動物園の最後と、とべ動物園の始まりは、文字通り一本につながっている。
地図にしてみると、消えた景色が少しだけ戻ってくる
古い施設を調べていると、文章だけではどうしても分かりにくいことがある。
「ここに動物園がありました」
という一文だけでは、昔の景色はなかなか浮かんでこない。
でも、当時の資料を読みながら、
「ここにゾウがいた」
「この辺りにライオンがいた」
「ここには水路が通っていた」
と地図の上に置いていくと、少しずつ昔の風景が見えてくる。
今回マップを作っていて感じたのは、
道後動物園は“昔あった施設”というより、現在の道後公園の中に痕跡を重ねて想像できる場所だった
ということだった。
次に道後公園を歩くと、少し見え方が変わるかもしれない
現在の道後公園に、動物はいない。
獣舎もない。
昔の動物園を知らなければ、ここにゾウやライオンがいたことに気付くこともないだろう。
でも、ほんの数十年前まで。
ここには動物園があった。
子どもたちが動物を見て回り、入口には大きなアーチが立ち、その奥にはたくさんの獣舎が並んでいた。
次に道後公園を歩く機会があれば、今回の地図を少し思い出してみてほしい。
何気なく歩いているその場所に、
かつてキリンがいて、ゾウがいて、ライオンがいた。
そう考えると、いつもの道後公園が、少しだけ違って見えるかもしれない。
参考資料
参考資料・出典
- 愛媛県立とべ動物園「沿革・歴史」
道後動物園の開園、砥部への移転理由、閉園後の動物輸送などを確認。 - 愛媛県「道後公園について」
道後公園の概要や、旧動物園区域が湯築城跡として整備された経緯を確認。 - 愛媛県「道後公園の沿革」
1953年10月1日の県立道後動物園新設、1987年10月21日の閉園、1988年4月1日のとべ動物園開園などを確認。 - 愛媛県立とべ動物園 年報「とべ動物園の沿革と現況」
道後動物園からとべ動物園への移転・拡張の経緯を確認。 - 愛媛県立図書館所蔵資料(愛媛県立道後動物園記念誌)
閉園時の園内案内図、飼育動物、施設配置などを確認し、本記事の園内再構成図作成の参考とした。
※本記事に掲載している「旧・道後動物園 園内再構成図」は、当時の資料や現地の地形情報などをもとに独自に再構成したものです。実際の縮尺や細部とは異なる場合があります。



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