松山に、水族館ができる。
そんな話を聞いた記憶はないだろうか。
場所は道後の近くだったような。
県民文化会館のあたりだったような。
でも、いつの間にか聞かなくなった。
そもそも、本当にそんな計画はあったのだろうか。
気になったので調べてみた。
水族館の計画は、本当にあった
調べてみると、あっさり記録が見つかった。
しかも、「誰かが思いついた」程度の話ではない。
2016年1月、松山商工会議所や愛媛経済同友会などの経済団体が、松山市に対して水族館建設に関する要望を行っている。
愛媛経済同友会が当時公開した要望書には、
「道後地区やその周辺部に新たに水族館を建設」
とはっきり書かれている。
どうやら、松山の水族館計画。
記憶違いではなかったようだ。
なぜ松山に水族館だったのか
きっかけの一つとなったのが、道後温泉本館の保存修理工事だった。
長期間にわたる工事によって、道後を訪れる観光客が減ってしまうのではないか。
そこで、新たな観光の目玉として浮上したのが「水族館」だった。
2016年2月の松山市長の記者会見でも、水族館について触れられている。
建設に適した場所はあるのか。
水は確保できるのか。
どのくらいの観光客を呼べるのか。
松山で事業として成り立つのか。
こうした点について調査する考えが示されていた。
つまり、
「松山にも水族館あったらいいよね」
という雑談レベルではなく、実現可能性を検討する段階まで話は進んでいたようだ。
候補地は「県民文化会館の南側」
そして、この計画には候補地もあった。
現在の愛媛県県民文化会館の南側にある県有地だ。
愛媛県が後に公開した資料にも、
「平成28年頃から当該県有地の活用を前提とした水族館建設の動きがあった」
と記録されている。
道後温泉から松山市中心部へ向かう途中。
もしここに水族館が完成していたら、松山の街の景色は今とはかなり違っていたかもしれない。
「夜の水族館」になる可能性もあった
さらに調べてみると、水族館の中身についてもいろいろなアイデアが出ていた。
愛媛経済同友会の資料には、
- 夜の水族館
- 恋人の聖地としての水族館
- 松山城や道後温泉など周辺観光地との連携
- 外国人観光客の誘致
といった構想が登場する。
単に魚を見る施設を造るのではなく、松山観光の新しい拠点にしようとしていたことが分かる。
そして、初期の要望書を読んでいて、特に気になったものがあった。
水族館で、一年中ホタルを見る?
2016年の要望書には、こんなアイデアまで盛り込まれている。
一年を通してホタルを観賞できる施設を、水族館の中に設置する。
参考として挙げられていたのが、東武動物公園の「ほたリウム」。
水族館に入って、魚を見て、さらにホタルを見る。
実現していたら、かなり個性的な水族館になっていたかもしれない。

※画像は生成AIによるイメージです。当時の計画や展示内容を再現したものではありません。
2019年には「推進する会」まで設立
計画はその後も続いていた。
2019年7月には、
「愛媛・松山の水族館建設を推進する会」
が設立されている。
松山市長の公式活動記録にも、設立総会への出席が残っている。
最初の要望から約3年。
専用の推進組織まで作られた。
ここまで来ると、「幻の構想」と呼ぶには思っていた以上に具体的だ。
もしかすると本当に、松山に水族館ができていた未来があったのかもしれない。
しかし、水族館はできなかった
その後、状況は大きく変わった。
新型コロナウイルスの流行などによって、観光を取り巻く環境や社会経済情勢が変化。
そして2023年2月。
「愛媛・松山の水族館建設を推進する会」は、水族館建設を断念した。
愛媛県の資料にも、
2019年7月 推進する会設立
↓
2023年2月 水族館建設断念
という経緯が残されている。
構想が持ち上がった2016年から、およそ7年。
松山の水族館計画は、実現しないまま終わった。
もし水族館ができていたら
県民文化会館の南側に水族館。
夜も楽しめる水族館。
その中には、一年中ホタルを見ることのできる施設。
そこから道後温泉へ向かう観光客。
そんな松山になっていた可能性があった。
もちろん、実際に建設されていたら成功していたのかは分からない。
それでも、今では何もない場所に、
「ここに水族館ができるかもしれなかった」
という別の未来が存在していたと思うと、少し不思議な感じがする。
松山に水族館ができる。
あの話は噂でも、記憶違いでもなかった。
ちゃんと計画され、推進する組織まで作られ、そして消えていった。
愛媛には、まだこんな「実現しなかった未来」が残っているのかもしれない。
たぶん。



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