「はしペン」って全国共通じゃないの? 県外で通じなかった愛媛の図工文化

愛媛で小学生時代を過ごした人なら、「はしペン」と聞いてピンとくる人も多いのではないだろうか。

黒い絵の具が入った小さな容器に、割り箸や竹のペンをグッと押し当てる。

そして、そのまま画用紙に線を引く。

細くなったり、太くなったり。
途中でかすれたり、急に濃くなったり。

図工の授業や写生で、そんな絵を描いた記憶がある。

少なくとも筆者にとって、「はしペン」は特別な画材ではなかった。

学校で使う、普通の道具。

……だと思っていた。

ところが県外の人に「はしペン」の話をしてみると、

「なにそれ?」

という反応が返ってきた。

えっ。

はしペンって、全国共通じゃないの?

気になったので調べてみることにした。

※当時の雰囲気をイメージした生成画像です。
※当時の雰囲気をイメージした生成画像です。
目次

そもそも「はしペン」とは何なのか

「はしペン」は、その名前の通り、割り箸などをペンのように使って描く画材・描画方法だ。

そして、「なんとなく学校にあった謎の黒い絵の具」ではなく、ちゃんと商品として存在している。

サクラクレパスが販売している、その名も、

「はしぺんえのぐ」

である。

オフィス ユー
¥348 (2026/09/24 02:09時点 | 楽天市場調べ)

2026年現在も、サクラクレパスの公式サイトに小・中学校向け商品として掲載されている現役商品だ。メーカー希望小売価格は税込363円。

容器の中では黒い絵の具をスポンジに含ませてあり、割り箸などを押し当てて絵の具を付ける。

この構造のおかげで、液体をそのまま入れた容器と違って、倒しても絵の具がこぼれにくい。

さらに乾燥すると水に流れにくくなるため、はしペンで輪郭を描いたあと、その上から水彩絵の具で色を付けることもできる。

あの独特な容器にも、ちゃんと意味があったのである。


あのガタガタした線は、失敗ではない

普通のペンなら、できるだけ均一な線を描けることが性能の一つになる。

でも、はしペンはむしろ逆だ。

割り箸の角を使う。

側面を使う。

絵の具をたっぷり付ける。

少しかすれさせる。

それだけで線の太さや濃さが変わる。

愛媛を拠点とするFÖRNEでも、はしぺんえのぐを使った様子が紹介されており、割り箸の角や側面、絵の具の量によって一本の線でもさまざまな表情が生まれることが、この画材の魅力として挙げられている。

そう考えると、小学生の図工に向いているのも分かる気がする。

きれいな線を引くことより、

「線そのものを楽しむ」

画材なのだ。

※当時の雰囲気をイメージした生成画像です。

ところで、これ本当に愛媛だけ?

ここで一番気になる疑問。

はしペンは愛媛だけの文化なのか?

調べてみると、どうやらそこまで単純ではなかった。

割り箸をペンとして使う技法そのものは、愛媛県外でも存在する。

つまり、

「割り箸で絵を描くのは愛媛だけ」

というわけではない。

一方で、「はしペン」が愛媛の学校生活の思い出として語られる例はかなり見つかる。

愛媛のローカルメディア「DO?GO!愛媛」でも、「これ愛媛だけなん!?」という学校あるあるの一つとして、図工の授業で使う「はしペン」が紹介されている。同記事では、愛媛以外では知らないという人が多い画材として取り上げられている。

FÖRNEの記事でも、愛媛で小学生だった筆者が20年以上前に図工でよく使っていたことや、2019年当時にも小学校の画材販売で「はしぺんえのぐ」が扱われていたことが紹介されている。

さらに、松前町の広報誌では、北伊予小学校の児童が全国規模のポスターコンクールで最優秀賞を受賞した作品について、

「はしペンと水彩絵の具で仕上げた」

と記されている。

少なくとも愛媛では、「はしペン」という言葉が特別な説明なしで通じるくらい、学校文化の中に入り込んでいたことがうかがえる。


愛媛県民には「普通」だった

ここが面白いところだと思う。

愛媛県民からすると、

「学校で使った画材」

というだけなので、ローカル文化だという感覚がない。

筆者もそうだった。

県外の人に話して「知らない」と言われて、初めて、

「え? これって愛媛のものなの?」

となった。

愛媛には、こういうものが時々ある。

県民にとっては当たり前すぎて、県外へ出て初めてローカル文化だったことに気付くもの。

はしペンも、その一つなのかもしれない。


なぜ愛媛で広まったのか

では、なぜ愛媛では「はしペン」がこれほど馴染み深いのだろう。

これについては調べてみたものの、

「○年に愛媛県の学校へ導入された」

「愛媛の○○という先生が広めた」

といった、はっきりした起源までは確認できなかった。

サクラクレパス自身が現在も全国向けの商品として「はしぺんえのぐ」を販売しているため、そもそも愛媛専用品というわけでもない。

それなのに、なぜ愛媛ではこれほど多くの人の記憶に残っているのか。

学校での採用状況なのか。

写生や図工教育との相性なのか。

あるいは、地域内で長く使われ続けたことで定番化したのか。

今のところ、そこは少し謎のままである。

でも、こういう「理由はよく分からないけど、なぜか愛媛では当たり前」というものこそ、地域文化として面白い。


しかも「はしぺんえのぐ」は今も現役

さらに意外だったのが、これ。

昔懐かしい学校用品だと思っていた「はしぺんえのぐ」は、現在も販売されている。

サクラクレパスの公式商品ページにも掲載されており、教育用品を扱う通販サイト「エデュース」でも現行商品として確認できる。

つまり、

「昔、愛媛の小学校で使ってた謎の画材」ではなく、今も生き残っている画材

なのだ。

久しぶりに見たら、ちょっと使ってみたくなる。

割り箸一本で、あのガタガタした黒い線を描く。

たぶん数十年ぶりでも、描き始めた瞬間に「ああ、これこれ」と思い出す人は多いはずだ。


あなたは「はしペン」、知ってますか?

今回調べてみて分かったのは、

「はしペン=愛媛にしかない」わけではない。

でも同時に、

愛媛では、かなり多くの人に共有された学校の記憶らしい。

ということだった。

何十年も前に小学生だった人も。

最近小学校へ通った人も。

黒い容器と割り箸を見れば、同じような記憶が蘇る。

そして県外の人に聞くと、

「知らない」

と言われることがある。

全国商品なのに、なぜか愛媛で妙に馴染み深い。

そんな少し不思議な画材、

「はしペン」。

これもまた、愛媛のちょっと妙な日常なのかもしれない。


参考資料

サクラクレパス「はしぺんえのぐ」
FÖRNE「子どもと楽しむ『はしぺんえのぐ』」
DO?GO!愛媛「これ愛媛だけなん!? 懐かしい気持ちになる学校あるある」

この話を誰かに伝える
  • URLをコピーしました!

この話を知っていますか?

コメントする

目次