松山では、中心部へ出かけることを「マチに行く」と言う。
「明日マチ行く?」
「今日はマチで飲む」
「ちょっとマチまで買い物に」
少なくとも筆者の周りでは、ごく普通に使われてきた言葉だ。
筆者自身も、これまで特に疑問を持たず使ってきた。
でも、ある日ふと思った。
マチって、どこ?
大街道は間違いなくマチ。
銀天街もマチ。
松山市駅も、もちろんマチ。
ここまでは迷わない。
では、JR松山駅は?
道後は?
ロープウェー街はどこまで?
「マチ」という言葉は普通に使えるのに、地図の上に境界線を引こうとすると、急に分からなくなる。
今回は、松山人が何となく使っている「マチ」の正体を調べてみる。
松山市には公式の「中心市街地」がある
まずは松山市がどう考えているのか調べてみた。
すると当然ながら、ちゃんと「中心市街地」というものが設定されている。
松山市の「第4期松山市中心市街地活性化基本計画」では、約305haが中心市街地として設定され、
- 都心地区
- JR松山駅周辺地区
- 道後地区
という3つの地区で構成されている。
なるほど。
……ん?
道後も?
さらに、
JR松山駅も?
もちろん、行政が定める「中心市街地」と、松山人が普段の会話で使う「マチ」は別物だ。
ただ、ここで一つ分かった。
「中心市街地」を調べても、「マチ」の答えにはならない。
むしろ、そのズレが面白そうだ。
道後は中心市街地。でも「マチ」?
例えば、道後温泉へ行くとする。
「今日どこ行く?」
と聞かれたら、
「道後行く」
ではないだろうか。
「マチ行く」と言って道後温泉へ向かう。
少なくとも筆者の感覚では、かなり違和感がある。
道後は松山市を代表する観光地であり、行政上は中心市街地。
それでも感覚としては、
道後は「マチ」ではなく「道後」。
道後には道後という、独立した強い名前がある。
そして問題のJR松山駅
もう一つ気になるのがJR松山駅だ。
名前だけ考えれば、これほど「松山の中心」っぽい場所もない。
松山駅。
県庁所在地の名前を冠したJRの駅である。
行政上も中心市街地に含まれており、駅周辺では大規模な整備も進んでいる。
でも、
JR松山駅は「マチ」なのか?
と言われると、筆者は少し考えてしまう。
「JR松山駅に行く」とは普通に言う。
でも、それを「マチに行く」と表現するかというと、なんとなく違う。
これは不思議だ。
県外の都市では、JRの中心駅周辺がそのまま繁華街になっていることも珍しくない。
しかし松山では、
JR松山駅=マチ
という感覚が、それほど強くない。
一方で、もう一つの大きな駅はどうか。
松山市駅は、文句なしに「マチ」
松山市駅。
こちらは迷わない。
マチである。
銀天街を西へ歩けば、そのまま松山市駅。
いよてつ髙島屋があり、市内電車、郊外電車、バスが集まる。
松山市も松山市駅を「市内最大の交通結節点」と位置付けている。
でも、そんな行政上の説明以前に、
松山市駅はマチ。
これは感覚としてかなり強い。
「市駅まで行く」と「マチまで行く」は、かなり近いところにある。
同じ「松山を代表する駅」なのに、
松山市駅 → マチ
JR松山駅 → うーん……マチ?
この違いは何なのだろう。
やっぱり大街道と銀天街が強い
松山市の資料を調べてみると、大街道と銀天街は「本市の商業核」と位置付けられている。
やっぱりここだった。
大街道。
銀天街。
この2つは「マチ」の中心と考えてよさそうだ。
さらに銀天街は松山市駅につながる。
大街道から銀天街を歩いて、市駅へ。
買い物をする。
ご飯を食べる。
遊びに行く。
この一帯には、
「マチに行く」
という言葉がよく似合う。
「マチ」は商業の中心なのかもしれない
少し歴史も調べてみた。
愛媛県の資料によると、松山の商業中心地は時代とともに変化し、明治20~30年代になると湊町や大街道が発展。
現在につながる中心商店街が形成されていった。
つまり松山は、
JR松山駅を中心に繁華街が形成された都市ではない。
大街道や湊町などの商業地が発展し、銀天街や松山市駅などと結び付いて、現在の中心部が形作られてきた。
だとすると、松山人がいう「マチ」は、
松山市の地理的な中心
でも、
行政上の中心市街地
でもなく、
昔から買い物や遊びに出かけてきた商業エリア
を指しているのかもしれない。
そう考えると、
松山市駅はマチ。
JR松山駅は微妙。
道後は道後。
という、一見不思議な感覚にも少し説明がつく。
じゃあ、「マチ」はどこまで?
ここからが本題である。
大街道はマチ。
銀天街もマチ。
松山市駅もマチ。
二番町や三番町も、「マチで飲む」と考えれば間違いなくマチだろう。
では、その外側は?
花園町は?
ロープウェー街は?
堀之内は?
勝山町は?
考えてみたが、明確な答えが出ない。
そこで今回は、
勝手に「マチ度」を付けてみることにした。
なお、アンケートは取っていない。
統計的な根拠もない。
松山で暮らしてきた筆者の感覚による、完全なる独断である。
異論は認める。
というか、たぶんある。

編集部の独断で判定「松山マチ度」
| 場所 | マチ度 | 編集部の感覚 |
|---|---|---|
| 大街道 | ★★★★★ | ここがマチじゃなかったら、どこがマチなんだ |
| 銀天街 | ★★★★★ | 文句なし。完全にマチ |
| 松山市駅 | ★★★★★ | 文句なし。ここも完全にマチ |
| 二番町・三番町 | ★★★★★ | 「マチで飲む」ならこの辺を思い浮かべる |
| 花園町 | ★★★★☆ | ほぼマチ。市駅との一体感も強い |
| 一番町 | ★★★★☆ | 大街道周辺は完全にマチ。ただし県庁方面へ行くと少し雰囲気が変わる |
| ロープウェー街 | ★★★☆☆ | 大街道側はマチ。でも北へ進むほど判断に迷う |
| 堀之内 | ★★★☆☆ | 位置的にはど真ん中。でも「マチに遊びに行く」のマチかというと微妙 |
| 勝山町周辺 | ★★☆☆☆ | この辺から「マチの外側」感が出てくる |
| JR松山駅 | ★★☆☆☆ | 松山駅なのに、なぜかマチ感が薄い |
| 道後 | ★☆☆☆☆ | 行政上は中心市街地。でも道後は「道後」だろう |
こうして並べてみると、なんとなく「マチ」の形が見えてくる。
「マチ」は丸くない
最初は、大街道を中心に円を描けば「マチ」の範囲になるのではないかと思っていた。
でも、どうも違う。
大街道から銀天街を通って松山市駅へ。
大街道から二番町・三番町へ。
北側はロープウェー街へ。
場所によって「マチ」が伸びている方向が違う。
つまり、
「マチ」は円形ではない。
そして境界線もはっきりしていない。
中心から離れていくにつれて、
「ここはマチ」
「まあマチ」
「たぶんマチ」
「……ここは違うか?」
と少しずつ薄くなっていく。
では「マチの中心」はどこなのか
範囲が決められないなら、せめて中心だけでも決めたい。
一か所だけ選ぶなら、筆者は、
大街道と銀天街が交わるあたり。
ここを「マチの中心」としたい。
北へ行けば大街道。
西へ行けば銀天街、そして松山市駅。
東へ行けば二番町・三番町の繁華街。
松山城も近い。
買い物。
飲食。
遊び。
松山人が「マチ」と聞いて思い浮かべるものが、この辺りに集まっている。
……気がする。
結局、「マチ」の境界は分からなかった
調べれば、行政上の「中心市街地」は分かる。
松山の商業の歴史も分かる。
大街道や銀天街が商業の中心であることも分かった。
でも、
「ここからここまでがマチです」
という線は、最後まで引けなかった。
そもそも、そんな線は存在しないのだろう。
大街道はマチ。
銀天街もマチ。
松山市駅もマチ。ここは迷わない。
二番町・三番町もマチ。
ロープウェー街は……どこまでだろう。
JR松山駅は……うーん。
道後は……道後。
こうして松山人それぞれの頭の中に、少しずつ違う「マチ」が存在しているのかもしれない。
普段何気なく使っている、
「マチ行ってくる」
という言葉。
改めて考えてみると、その「マチ」がどこなのか、意外とうまく説明できない。
とりあえず今回は、
大街道・銀天街・松山市駅を核として、その周辺にぼんやり広がっているエリア。
それを「マチ」ということにしておこう。
境界線については――
たぶん、この辺。



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