最初に聞いた話は、簡単なものだった。
松山市内の古い雑居ビルに、変なガチャがある。
ただし、昼間に行っても回せないらしい。
入口が開いているのは、夜だけ。
何が出るのかは分からない。
それだけだった。
昼間は、閉まっていた
教えられた場所へ行ったのは午後だった。
古い雑居ビルの脇に、細い入口がある。
だが、シャッターは下りていた。
看板はない。
店名もない。
中の様子も見えない。
住所を間違えたのかと思った。
周囲を一度歩いてみたが、それらしいものはなかった。
その日は、そのまま帰った。
夜になると、入口が開いていた
その日の夜。
近くを通る用事があって、もう一度だけ見に行った。
シャッターが開いていた。
エントランスの階段横に、確かに一台だけ置かれていた。
ガチャだった。
ただ、よく見るものとは少し違った。
商品見本はない。
キャラクターの絵もない。
中身を見るための窓もない。
正面にあるのは、硬貨投入口とハンドル。
それから、
500円
という表示だけだった。
何が入っているのか。
何個入っているのか。
そもそも本当に何か出てくるのか。
外からは何も分からなかった。

500円を入れた
少し迷った。
それでも、ここまで来たのだからと思った。
五百円玉を入れる。
ハンドルを回した。
ガタン、と音がした。
下の取り出し口を開ける。
カプセルが一つ入っていた。
半透明の、ごく普通のカプセルだった。
開けてみる。
中に入っていたのは、小さな円盤だった。
白い表面。
銀色の縁。
手のひらに収まるくらいの大きさ。
見た目は、紛失防止用の小型タグに近い。
ただし、メーカー名はない。
ロゴもない。
型番もない。
表面には、四文字だけ刻まれていた。
LINK
それだけだった。

スマートフォンを近づけてみた
タグらしきものなら、スマートフォンに反応するかもしれない。
そう思って近づける。
短く振動した。
URLの通知が出た。
見覚えのないアドレスだった。
開いてみる。
画面は白。
上部に、小さく
LINK
と表示されている。
その下には、
1 / 2
そして一文だけ。
審査を受け付けました。
何の審査なのかは書かれていない。
入力フォームもない。
名前も住所も聞かれていない。
そもそも、審査を申し込んだ覚えもない。
その下に、小さな画像があった。
暗くて、かなり荒い。
一瞬、何の写真か分からなかった。
拡大してみる。
さっき入ってきた、
雑居ビルの入口に見えた。
画質が悪く、撮影日時も表示されていない。
それが本当に同じ場所なのか、断定はできなかった。
ただ、
似ていた。
かなり。
しばらく何も起きなかった
ページを更新してみた。
表示は変わらない。
LINK
1 / 2
審査を受け付けました。
そのまま数分待った。
何も起きない。
よく分からなかったので、画面を閉じた。
タグをポケットに入れる。
建物を出た。
もう一度振り返ったが、通路には誰もいなかった。
ガチャだけが奥に置かれていた。
「2 / 2」
そこから少し歩いたところで、
何となく、もう一度ページを開いた。
表示が変わっていた。
LINK
2 / 2
その下には、
契約が完了しました。
と書かれていた。
一瞬、意味が分からなかった。
契約。
何の契約なのか。
その説明はない。
規約へのリンクもない。
料金もない。
契約期間もない。
あるのは、その下に表示された1つの項目だけだった。
会員NO:R22-JSVK

捨てるか迷った
そこで初めて、
ポケットの中にあるタグが急に嫌になった。
これが本当に紛失防止用のタグなら、
誰かが位置を把握できる可能性もある。
ただ、それ以上に気になったのは、
自分が何かに申し込んだことになっていることだった。
ガチャを回した。
スマートフォンを近づけた。
やったのは、それだけだ。
それなのに、
審査を受け付けられ、
契約が完了し、
会員番号まで発行されている。
近くのゴミ箱に捨てようかと思った。
結局、捨てなかった。
理由はうまく説明できない。
その後
数日後。
もう一度、同じ場所を通った。
昼間だった。
シャッターは閉まっていた。
中は見えない。
夜にもう一度行けば、
また開いているのかもしれない。
ただ、
今のところ確認には行っていない。
タグはまだ手元にある。
Webページも開く。
表示は、あの日から変わっていない。
LINK
2 / 2契約が完了しました。
会員NO:R22-JSVK
何の契約だったのか。
それは、まだ分からない。



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