「段数が変わる石段」があるらしい
少し前、気になる話を聞いた。
松山市の郊外に、長い石段のある小さな神社がある。
特別有名な神社というわけでもない。
観光地でもなければ、いわゆる心霊スポットとして知られている場所でもない。
ただ、その神社には妙な話があるらしい。
上るときと、下りるときで石段の数が違うことがある。
そして、もうひとつ。
もし数が違っていたら、
数え直してはいけない。
そのまま振り返らずに帰った方がいいという。
……なんだそれ。
そもそも石段なんて、数えて歩かなければ何段あるのか分からない。
数え間違えれば、それだけで「段数が変わった」ことになる。
たぶん、そういう話なんだと思う。
でも、気になってしまった。
実際に数えてみることにした。
場所は伏せておく
今回、神社の名前や詳しい場所は書かないことにした。
別に「行くと危険だから」というわけではない。
普通に地域の人が利用している神社だからだ。
妙な噂と一緒に場所だけが広まるのもよくない。
松山市内から車でしばらく走ったところ。
住宅が少なくなってきたあたりに、その神社はあった。
道路からも石段が見える。
思っていたより長い。
上を見ると、その先に鳥居が見えた。

上りは「87段」だった
せっかく来たので、最初から数える。
一段。
二段。
三段。
最初はいい。
ただ、20段を超えたあたりから地味に面倒になってくる。
人間、石段を上りながら数を数えるだけでも意外と集中力を使う。
途中で、
「今、34だっけ。35だっけ」
となりそうになる。
それでも一応、数えながら上った。
そして最後の一段。
87。
87段だった。
スマホに「87」とだけメモした。
境内は普通だった
上まで来てしまえば、特に変わったところはない。
小さな神社だった。
お参りをして、少し休む。
誰かがいるわけでもない。
妙な音が聞こえるわけでもない。
もちろん、何かが見えるわけでもない。
静かなだけだった。
ここまで来ると、
「俺は何をしに来たんだろう」
という気持ちになってくる。
石段なんて、上って下りたら同じ数に決まっている。
せっかくなので、帰りも数えることにした。
帰りも数えてみる
今度は下りながら数える。
一段。
二段。
三段。
上りよりも下りの方が少し数えにくい。
足元を見ながら歩くので、途中で数字が飛びそうになる。
だから、なるべくゆっくり下りた。
70。
80。
もうすぐ下だ。
84。
85。
86。
道路に着いた。
86段だった。
たぶん、数え間違えた
少し考えた。
上りは87。
下りは86。
一段違う。
でも、普通に考えれば数え間違いだろう。
途中で数字をひとつ飛ばしたのかもしれない。
上りで同じ段を二回数えた可能性もある。
最初か最後の一段を、どこまで「石段」として数えるかでも変わる。
理由なんていくらでも考えられる。
もう一度上れば分かる。
そう思って、石段の方を見た。
そのとき、来る前に聞いた話を思い出した。
数が違っていたら、数え直してはいけない。
このまま帰ることにした
もちろん、ただの噂だ。
そもそも誰が言い始めたのかも分からない。
87段だったという自信も、そこまでない。
86段だったという自信もない。
もう一度数えれば、おそらく87段か86段のどちらかになる。
もしかしたら88段になるかもしれない。
……。
やめた。
そこまでして確かめることでもない。
車に乗って、そのまま帰った。
振り返らなかった。
いや。
振り返る必要がなかっただけだ。
たぶん。
※この記事は、地域にまつわる不思議な話をモチーフにした創作を含む読み物です。実在の人物・団体・施設等とは関係ありません。



この話を知っていますか?