愛媛の「東京ケーキ」、東京ではそう呼ばないらしい

愛媛の祭りで見かける、あの小さくて丸いカステラ。

屋台の前を通ると、甘い匂いがする。

名前は、

東京ケーキ。

子どもの頃から、普通にそう呼んでいた。

でも、あるとき気になった。

東京では、これを「東京ケーキ」と呼ばないらしい。

県外では「ベビーカステラ」と呼ばれることが多いという。

じゃあ、なんで愛媛では東京ケーキなんだろう。

気になったので、調べてみた。

目次

愛媛では、今も普通に「東京ケーキ」

まず確認してみると、

愛媛では現在も「東京ケーキ」という名前が普通に使われている。

松山の屋台イベントでも、たこ焼きやフライドポテトと並んで「東京ケーキ」と紹介されているし、松山街商協同組合の販売品目にも「東京ケーキ」の名前が載っている。

つまり、

愛媛で「東京ケーキ」が通じる。

これは間違いなさそうだ。

祭りの屋台で見かけて、

「あ、東京ケーキや」

となる。

少なくとも松山では、かなり馴染みのある呼び方だと思う。

県外では「ベビーカステラ」?

同じようなお菓子は、県外では「ベビーカステラ」と呼ばれることが多い。

小さな型に生地を流し込んで焼く、一口サイズのカステラ。

見た目も、食べた感じも、かなり近い。

だからネット上では、

「愛媛ではベビーカステラのことを東京ケーキと呼ぶ」

と説明されていることもある。

なるほど。

では「東京ケーキ」は、愛媛独自の呼び方なのだろうか。

そう思って調べてみると、

話は少し違ってきた。

福岡にも「東京ケーキ」があった

福岡県立図書館がまとめた調査記録を見ていると、

福岡の祭りにも「東京ケーキ」が登場していた。

1991年の新聞記事では、筥崎宮の放生会で売られるものとして、

カルメラなどと並んで「東京ケーキ」が紹介されている。

しかも、その時点ですでに

「昔懐かしい味」

として扱われていた。

1999年の記事にも、同じく筥崎宮の露店で売られる東京ケーキの記録が残っている。

……愛媛だけじゃない。

さらに調べてみる。

北海道にもあった

今度は北海道。

こちらでも、祭りの露店の定番として「東京ケーキ」が登場する記録が見つかった。

愛媛。

福岡。

北海道。

ずいぶん離れている。

どうやら「東京ケーキ」は、

愛媛だけのローカルネームではなさそうだ。

では、この名前はどこから来たのだろう。

戦前に「東京ケーキスピード器」が存在していた

ここで、かなり面白い資料が出てきた。

福岡県立図書館の調査には、

古い製菓機械についての記録が残っている。

その機械の銘板には、

「東京ケーキスピード器」

と書かれていた。

製造元は、

東京市中野区の中村商會。

さらに実用新案まで調べられていて、

昭和7~8年ごろ。

つまり、

1932~1933年ごろには、すでに「東京ケーキ」という名前の機械が存在していたらしい。

戦前である。

思っていたより、ずっと古い。

「ベビーカステラ」より古い?

ここで、もう一つ気になることが出てくる。

ベビーカステラの老舗として知られる三宝屋は、

「ベビーカステラ」という名前を昭和29年、1954年に付けたとしている。

一方で、

「東京ケーキスピード器」は1930年代。

単純に名前の記録だけを比べると、

「東京ケーキ」の方が先に存在していた可能性が高い。

つまり、

「ベビーカステラを、愛媛だけ東京ケーキと呼んでいる」

というより、

もともと似たような露店菓子にいくつかの呼び名があって、

その中の一つだった「東京ケーキ」という古い名前が、

愛媛では今も強く残っている。

そんな可能性もありそうだ。

じゃあ、なぜ「東京」なのか

ここが一番気になる。

なぜ東京ケーキなのか。

ネット上では、

「昔の地方では東京に憧れがあったから」

とか、

「東京から材料を仕入れていたから」

といった説も見かける。

ただ、今回調べた限りでは、

はっきり裏付けられる資料は見つからなかった。

一方で、

戦前に東京の会社が

「東京ケーキスピード器」

という名前の製菓機械を販売していたことは確認できる。

だから、

「東京で作られた機械だったから東京ケーキ?」

とも考えたくなる。

ただし、これも確証はない。

結局、

なぜ東京ケーキなのかは、まだよく分からない。

松山では、なぜ残った?

もう一つ不思議なのが、

なぜ愛媛では今も「東京ケーキ」という名前がこんなに普通に残っているのか。

福岡や北海道にも記録はある。

でも、松山では今でも祭りの屋台で普通に見かける。

しかも、松山街商協同組合の販売品目を見ると、

「東京ケーキ」と「ベビーカステラ」が別々に載っている。

少なくとも現在の松山の屋台業界では、

完全に同じものとして一括されているわけでもなさそうだ。

松山では、昔から「東京ケーキ」として売り続けてきた店があり、

その名前が地域に定着したのかもしれない。

ただ、

ここも今のところは推測でしかない。

愛媛だけじゃなかった

最初は、

「愛媛ではベビーカステラを東京ケーキって呼ぶらしい」

くらいの話だと思っていた。

でも調べてみると、

福岡にもあった。

北海道にもあった。

さらに、

戦前には「東京ケーキスピード器」という機械まで存在していた。

どうやら「東京ケーキ」は、

単なる愛媛独自の呼び方というより、

昔の露店文化の中で使われていた古い名前が、愛媛では今も残っている。

そんな食べ物なのかもしれない。

ただし、

なぜ「東京」なのか。

なぜ愛媛では今もこの名前が強く残っているのか。

そこまでは、結局分からなかった。

祭りで東京ケーキを見かけたら、

少しだけ思い出してほしい。

あの小さなカステラには、

思っていたより長い歴史があるのかもしれない。


参考

・国立国会図書館 レファレンス協同データベース
「『東京ケーキ』というお祭りの屋台などで売られている菓子がある。その菓子を作る機械の設計図が見たい。」
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/reference/show?asc=desc&dtltbs=1&fi=5_%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BA%BA+8_21&id=1000360252&ldtl=1&mcmd=25&ndc1=50&ndc_lk=1&page=ref_view&st=update

・松山街商協同組合「事業内容」
https://ennichi55.com/jigyou.html

・松山観光コンベンション協会
「8月28日(金)~30日(日)に『夏の坊っちゃん屋台まつり』を開催します!」
https://www.mcvb.jp/topics/detail.php?e=1&i=382

・三宝屋「Q&A」
https://www.mitakaraya.jp/qa.html

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