※公表された被害事例をもとにした生成AIによる再現イメージです。実在の人物・サービスとは関係ありません。
街角に置かれた自動販売機。
飲み物の写真に交じって、ときどき妙な広告が貼られていることがある。
「裕福な女性をご紹介します」
「女性の相談相手になるだけで報酬」
「秘密厳守・高収入」
困っている女性の話を聞くだけで、お金までもらえるらしい。
こちらが支援するのではない。女性から支援される側である。
世の中には、ずいぶん都合のいい仕事があるものだ。
この広告に連絡すると、いったい何が起きるのだろう。
実際に連絡するのは、やめておいた
取材のために電話をかけてみる。
そうすれば、話は早い。
しかし、こちらの電話番号やLINEアカウントを相手に知られることになる。個人情報を渡したうえで、詐欺の可能性がある相手とやり取りを続けるのは、さすがに危険である。
そこで今回は、広告の連絡先には接触せず、警察や国民生活センターが公表している被害事例を調べることにした。
調べてみると、このような広告の先で何が起きるのか、かなり具体的に見えてきた。
※以下は、複数の公的機関が公表している被害事例をもとに、典型的な流れを再構成したものです。今回見かけた広告の運営元へ、実際に連絡したものではありません。また、この広告の運営元が同様の行為をしていると確認したものでもありません。
最初に出るのは、丁寧な案内役
広告を見て連絡すると、担当者がサービスの内容を説明する。
登録されているのは、経済的に余裕のある女性たち。
仕事で成功しているが、日々の悩みを話せる相手がいない。食事や会話に付き合ってくれる男性を探しており、お礼として報酬を支払う意思もあるという。
こちらに特別な資格は必要ない。
女性の話を聞き、秘密を守れる人なら問題ない。
説明は丁寧で、強引に契約を迫るわけでもない。
この段階では、まだお金を請求されないこともある。
LINEに女性のプロフィールが届く
しばらくすると、LINEなどに女性のプロフィールが送られてくる。
年齢、職業、趣味、簡単な自己紹介。
顔写真が添えられている場合もある。
「経営者」
「会社役員」
「夫とは長く別居中」
「一緒に食事をしてくれる方を探しています」
プロフィールを見る限り、怪しい人物には見えない。
女性本人を名乗るアカウントから、メッセージが届くこともある。
「プロフィールを見て、優しそうな方だと思いました」
「ぜひ一度お会いしたいです」
ここまで来ると、紹介話が急に現実味を帯びてくる。

※公表された被害事例をもとにした生成AIによる再現イメージです。実在の人物・サービスとは関係ありません。
会う前に、登録が必要になる
女性との話がまとまり、いよいよ会う段階になる。
そこで初めて、運営側から費用の話が出る。
「正式に紹介するには、有料会員への登録が必要です」
「女性会員の安全を守るため、身元確認が必要です」
「会員カードを発行しないと、面会できません」
請求されるのは、数万円程度。
高額ではあるが、払えない金額でもない。
しかも女性と会えば、それ以上の報酬がもらえるという。
結果だけを見れば、すぐに取り戻せる。
そう考えて、登録料を支払う。
支払うと、次の費用が現れる
会員登録が終われば、今度こそ会える。
ところが、次の手続きが必要になる。
「高額な報酬を受け取るための証明書」
「個人情報を交換するための解除費用」
「面会時のトラブルに備えた保証金」
最初に聞いていなかった費用だが、ここまで登録を進めている。
女性本人からも、
「私も費用を払いました」
「あと少しで会えますね」
と連絡が来る。
相手もお金を払っているなら、こちらだけ途中でやめるのは申し訳ない。
そう思って、次の費用も支払う。
なぜか登場人物が増えていく
やり取りを続けるうちに、別の担当者が現れる。
女性を紹介する担当者。
報酬を管理する担当者。
会員登録を確認する担当者。
返金を処理する財務責任者。
それぞれが別の役割を持ち、もっともらしい説明をする。
国民生活センターは、こうして複数の人物が次々に登場する方法を「劇場型」の手口として挙げている。
一人の怪しい人物から請求されるより、組織として手続きが進んでいるように見える。
しかし、払っても払っても女性には会えない。
返金してもらうためにも、お金が必要になる
さすがにおかしいと思い、返金を申し出る。
すると財務担当者から、次のような説明を受ける。
「返金処理には、同額の入金履歴が必要です」
「女性側は、あなたのためにすでに費用を負担しています」
「今日中に払わなければ、返金できなくなります」
失ったお金を取り戻すために、さらにお金を払う。
冷静に考えれば不自然だが、それまでに支払った金額が大きいほど、途中で諦めるのは難しくなる。
女性も自分のためにお金を出している。
あと一度だけ払えば、すべて戻ってくる。
そう信じて、最後の費用を支払う。
しかし、返金はされない。
女性にも会えない。
残るのは、何度も購入した電子マネーや振込の記録だけである。

※公表された被害事例をもとにした生成AIによる再現イメージです。実在の人物・サービスとは関係ありません。
実際に327万円を支払った事例
これは、単なる想像上の話ではない。
富山県警察が2026年4月に公表した事例では、SNSで「ユキコ」と名乗る人物からメッセージが届き、LINEの「ミキ」、さらに別の通信アプリへと誘導された。
被害者が女性とのデートを申し込むと、今度は「ナオコ」と名乗る人物から、
「クラブの会員カードを取得する必要がある」
「会員にならなければ女性とデートできない」
と説明された。
被害者は電子マネー、銀行振込、ギフトカードなどで合計327万円を支払った。その後、さらにお金を求められ、詐欺に気づいたという。
「女性が260万円払った」と信じ込ませた事例
徳島県が2026年7月に公表した事例では、70代の男性がインターネットで交際クラブを見つけて登録。紹介された女性とLINEでやり取りを始めた。
男性は、入会金や女性と会うための費用として、電子マネーを繰り返し送った。
その後、「財務ディレクター」を名乗る人物から、
「これまでのお金を返すには、同じ金額を払う必要がある」
「女性が260万円を代わりに払っている」
「残りの160万円を早く払ってほしい」
と要求された。
男性はさらに160万円分の電子マネーを送り、家族に相談したことで被害に気づいた。
女性も自分のために大金を払っている。
その設定が、引き返しにくくするために使われていた。
「話を聞くだけで100万円」は、1万円から始まった
国民生活センターにも、よく似た相談が寄せられている。
ある相談者は、「話を聞いてくれたら100万円をあげる」という誘いを信じてサイトに登録した。
最初に請求されたのは、有料会員登録代の1万円。
次に、「高額な報酬を受け取るための証明書代」として2万円を請求された。
支払い後、相手からの連絡は途絶えた。
国民生活センターによると、「相談に乗るだけで報酬がもらえる」などとうたうサイトに関する相談は、2016年度から2019年度にかけて毎年およそ3,000件寄せられていた。
最初から何十万円も請求するのではない。
払えそうな金額から始まり、名目を変えながら請求が重なっていく。
松山でも約80万円の被害が出ていた
さらに調べると、遠い地域だけの話ではなかった。
松山西警察署管内では、2025年中に交際あっせん詐欺が1件発生し、被害額は約80万円と公表されている。
詳しい手口までは明らかにされていない。
そのため、自販機に貼られた広告と、この被害を直接結びつけることはできない。
ただ、「女性を紹介する」という話を入口に、登録料や保証金を請求する詐欺が、松山でも実際に発生していたことは分かる。
街角の広告は、どこにつながっているのか
今回見つけた広告の先に、本当に裕福な女性がいるのか。
それとも、女性のプロフィール、案内担当者、財務担当者まで、すべて一つの筋書きなのか。
実際に連絡していない以上、答えは分からない。
ただし、警察が「交際あっせん詐欺」として注意を呼びかけている手口と、広告の内容がよく似ていることは確かである。
「女性を紹介します」
「相談に乗るだけで報酬」
「登録すればお金を受け取れる」
お金をもらうはずの話なのに、こちらがお金を払うことになったら、一度立ち止まった方がいい。
街角の自販機に貼られた小さな広告。
その先に待っているのは、裕福な女性ではなく、役割の違う何人もの登場人物と、終わらない支払いなのかもしれない。
参考にした情報
※今回見かけた広告の運営元が、記事中で紹介した詐欺を行っていると確認したものではありません。広告に記載された電話番号やQRコードには接触せず、公的機関の情報をもとに、類似する手口を調べたものです。トラブルに遭った場合は、消費者ホットライン「188」または警察相談専用電話「#9110」へ相談してください。



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