何年か前、仕事で南予に行ったときのこと。
朝からどうにも体がだるかった。
疲れが溜まっていたのか、風邪のひき始めだったのかは分からない。
午後になると、さすがにしんどくなってきた。
まだ仕事は残っている。
仕方なく、近くにあった小さな薬局に入った。
「これも飲んでいきなさい」
店にいたのは、年配の女性だった。
体がだるいことを伝えて、風邪薬を選んでもらった。
会計を済ませようとしたところで、
「しんどいんだったら、これも飲んでいきなさい」
と言われた。
栄養ドリンクでも出てくるのかと思った。
違った。
女性が取り出したのは、透明なカプセルだった。
カプセルを二つに分ける。
そこへ、小さな容器から黒っぽい液体を注いだ。
そして、カプセルを閉じる。
見たことのない飲み方だった。
「これ、飲むんですか?」
聞くと、
「そうそう」
とだけ言われた。
水と一緒に飲み込んだ。

なんとなく、少しマシになった
薬局を出て、仕事に戻った。
しばらくすると、
なんとなく、さっきより楽な気がした。
本当に何かが効いたのか。
少し休んだからなのか。
単に「薬を飲んだから大丈夫」と思っただけなのか。
分からない。
ただ、その日は何とか仕事を終えることができた。
その夜、熱が出た
夜。
宿に戻る頃には、今度は熱が出ていた。
やっぱり風邪だったのかもしれない。
もう何もする気にならず、そのまま早めに寝た。
そして翌朝。
目が覚めたとき、妙に体が軽かった。
前日のだるさが、かなり引いている。
熱も落ち着いていた。
「あれ?」
と思った。
一晩寝たから治っただけかもしれない。
風邪薬が効いたのかもしれない。
それとも――。
ふと、昨日の黒い液体を思い出した。
あれは何だったんだろう
それから何年か経った。
南予を通ったとき、あの薬局のことを思い出した。
確か、この辺だったはず。
けれど、店はもうなかった。
もちろん、特別な薬だったとは思っていない。
普通に売られている滋養強壮剤か何かだったのだろう。
それでも、
小さな薬局。
透明なカプセル。
そこに注がれた、黒い液体。
その日の夜に熱が出て、
翌朝には妙にすっきりしていたこと。
今でも、ときどき思い出す。
あのとき飲んだものは、何だったんだろう。
この記事について
この記事は実際の体験をもとに、一部の時期・場所・状況や描写を再構成しています。



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